ヒカオケインタビュー


ファイナルファンタジーXIVの魅力といえば、ゲームコンテンツもさることながら、冒険を彩るさまざまな音楽!

初めてフィールドに足を踏み入れたときの感動、ボス戦の思い出……それらはすべて音楽と共に蘇る。この素晴らしい音楽に魅せられ、リアルの世界で「光の戦士による光の戦士のためのコンサート」を開催した団体がある。「光のオーケストラ」(以下、ヒカオケ)だ。

何故コンサートの開催に至ったのか、どのようにしてメンバーを集めたのか──。実際にヒカオケの演奏を体験したスタッフが運営メンバーに話を聞いた。


光のオーケストラ

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FINAL FANTASY XIV楽曲を演奏することを目的とした奏者はほぼヒカセンという非公式のアマチュアオーケストラ。2019年1月13日(日)に行った公演は超満員の中、大盛況で閉幕した。

Omi Nyan(以下、おみ)


おみ:おみです! 運営では広報を担当しております。担当楽器はクラリネット&バスクラリネットです。あと、趣味で肉botをやっております。

 

Kashu Ajul(以下、かしゅー)


かしゅー:かしゅーと申します。運営ではおみにゃんと同じ広報でした。楽器はチェロを担当しています。普通にララフェルおじさんをしています。

 

Alty Zephyris(以下、大臣)


大臣:大臣です。運営では編曲管理と、シヴァとクルザス西部高地の編曲を担当していました! 楽器はパーカッション(打楽器)です! 今日のインタビューで侍AFを着るため、サブキャラですがLv70にしてきました。

 

Rossana Milanese(以下、しゅーちゃん)


しゅーちゃん:しゅーちゃんです。メインキャラの名前は「める」です。運営では副団長雑用をしていました。楽器は多分打楽器です。

 

Hamayan Earth(以下、はまやん)


はまやん:はまやんです。運営では会計担当でした。楽器はバイオリン(セカンド)です。コンサート当日は端っこのほうにいました。

 

ヒカオケはほぼ100%ヒカセン? 集まった理由も様々だった。


──本日はお集まりいただきありがとうございます。
ヒカオケはFFXIV公式オーケストラコンサート(以下、公式コンサート)に触発されて発起したとお聞きしています。どのようにして130人強ものヒカオケ団員を集める事ができたのでしょうか?

しゅーちゃん:もともと、ゲーム音楽演奏界隈でファイナルファンタジーXIVというタイトルが注目を集めてはいました。「曲、かっこいいよね」くらいですけど。でも、公式コンサートで火がついたプレイヤー一同がそれぞれ居たんです。

おみ:公式コンサートの帰りに、ヒカオケ運営メンバー数名で肉を食べに行った時に話したのがきっかけですね。私とかしゅーさんと、今日は不在なのですが団長がそうでした。

大臣:ゲーム音楽演奏界隈にヒカセンがどのくらい存在するのか、その調査から始まりました。
「FFXIVいいよ!!」と宣伝はしていたけど、あの頃はそこまでゲーム音楽演奏界隈にヒカセンは多くなかったかも。

かしゅー:いま爆発的にゲーム音楽演奏界隈のヒカセンは増えてますけど、当初はそんなに居なかったですね。

しゅーちゃん:それでも20人以上はいたけどね(笑)。

大臣:公式コンサート会場でだいぶ見かけましたからなあ……(笑)。

おみ:ずっとFFXIVに勧誘していても、なかなか増えなかったところに「光のお父さん」効果で増えました(笑)。

かしゅー:「光のお父さん」強かったですね(笑)。

しゅーちゃん:他にも公式コンサートの評判や、歴代FF要素などの影響が大きかったと思います。

──もともとゲーム音楽演奏界隈でご活躍されていたメンバーの他、Twitterなどからの公募で来たのは何人位だったのでしょう?

しゅーちゃん:楽器ごとに状況が異なるので一概に言えないところがありますが、応募してくださった方々のほぼ100%がヒカセンでした(笑)。
不足パートはゲーム音楽演奏界隈の友人たちに営業して、FFXIV沼に沈んでいった方も少なからずいらっしゃいます。

大臣:エオルゼアは沼。

かしゅー:始めちゃったらもうドボンですわ(笑)。


しゅーちゃん:弊団体に参加されてから本番までに、紅蓮に到達した人間が何人いたことか。

はまやん:沼に沈んで3.xまで進めた猛者もいたなぁ。

──指揮者の方も、依頼を受けてからFFXIVを始めたそうですね。でも皆さん、よくぞそこから『紅蓮のリベレーター』まで辿り付いてくれたな、と思います。

大臣:あっという間に『紅蓮のリベレーター』まで駆け抜けてましたね(笑)。

おみ:とりあえず一次の募集条件に“パッチ3.x(蒼天編)をクリアしていることを推奨”という項目がありましたから(笑)。

しゅーちゃん:「アンコール曲で盛り上がりたい」という気持ちを、そのまま出してくれた人がたくさんいました。

 

コンサート実現までの苦労と努力。ヒカオケはFFXIVへの愛があったからこそ実現した。


──全国各地からたくさんの奏者さんが集まりましたが、合同練習はどちらで行われていたのですか? 団員があれだけの人数にのぼると、練習会場を押さえるのにも一苦労しそうです。

しゅーちゃん:練習会場は首都圏の公共施設です。会場の手配も、ものすごく苦労しました……。

おみ:人数的に合唱メンバーが入りきらない問題が(笑)。

はまやん:うっ……お財布が……。

かしゅー:場所の確保については手分けして、団員さんにもご協力をいただいていました。

しゅーちゃん:施設老朽化による改築等の問題で、首都圏の会場の倍率が跳ね上がっていましたからね。

──初回の練習から本番までに、何回くらいオケと合唱の合同練習があったのでしょう?

しゅーちゃん:合同練習と銘打ってなくても、合唱の方々で熱心に練習に来られていた方もいました……。
何回くらいというと、ちゃんとやったのは7~8回くらいかな。

おみ:オケと合唱合わせはそのくらいですね。

──そんな回数であれだけのクオリティのコンサートが!?

大臣:オケのみとか、合唱のみとかは、それとは別にもっとやっています。

しゅーちゃん:初の合同練習はテンションがおかしかったです。

大臣:おかしかったね(笑)。

はまやん:「ヒカセン、やべぇ」しか印象になかった(笑)。

おみ:オケだけの曲やってる時の合唱勢の熱視線がすごかった(笑)。

 

悔しい! でもわかっちゃう! 練習中の強烈な名言(?)の数々。


──練習中になにか思い出深いエピソードはありますか?

しゅーちゃん:迷言なら毎回生まれてましたね。

おみ:「彩られし山麓*」……。朝並に小鳥の鳴き声のパートの音が大きくて、指揮者の方から「朝」って言われた事件がありました。

*高地ドラヴァニア:昼のBGM。

しゅーちゃん:「そんなにチュンチュンしていないでしょ!!」とか。

かしゅー:指揮者の先生の指示が的確というか名言、迷言でした(笑)。その他にも「イシュガルド正教に親でも殺されたかのようなトロンボーン」とか。

しゅーちゃん:合唱部隊に、アンコールで歌った「壊神の拳の届く場所(アラミゴ国歌)」を練習禁止にしましたね。「解放された国の兵士がそんなに綺麗に歌うわけねぇだろ!」と。

おみ:蒼天編の曲ではいきいき演奏し過ぎて、「ストーリーを思い浮かべろ!」って言われたこととか。

一同:(笑)。

──奏者もヒカセンだからこそ、その説明で何となくわかってしまう説得力があるのが悔しいです(笑)。

大臣:楽譜の練習番号の例えも、メテオのMから、とかだった(笑)。

しゅーちゃん:グリダニアのG! 他の練習番号の略称候補も有志がスプレッドシートで共有をかけてましたね。

はまやん:みんな積極的にそういうのを作っていました。

おみ:みんな仕事が早い(笑)。

大臣:リアルクラフターが多かったですね(笑)。おみさんはその筆頭ですが!

──団員の方が胸に付けていたバッジや会場で配布されたパンフレットなど、コンサートに関わる制作物のクオリティが尋常じゃなかった気がします(笑)。

おみ:そう言っていただけると嬉しい限りです!(笑)

大臣:そのあたりの演出も含めてのコンサートですからね!

しゅーちゃん:ファンの熱意による持ち出しですね……。この場合はお金だけでなく時間もですが……。

──そうですよね……。特に遠方の団員の出張費や移動時間を聞いて、ひっくり返った覚えがあります。

しゅーちゃん:静岡、愛知、岐阜、兵庫、広島とか、西日本からの参加者も多かったですね。

 

楽曲選びはもはや竜詩戦争! ヒカセンならではのこだわりが垣間見える。


──コンサート会場の観客も9割がヒカセンということでしたが、特に意識した点や工夫したことなどはありますか?

大臣:何はともあれ自分たちが納得できるもの……ですね。

しゅーちゃん:セットリストの大元は、私が作ったんですが、ストーリーの流れとやりたい曲をどう挟むか……っていうジレンマはありましたね。私たちもヒカセンなので、まず自分たちで納得できないと表に出せない、というのは運営全体が感じていた気がします。

大臣:FFXIVの楽曲数ってギネス入りしてる程なので、選曲会議は竜詩戦争になるんです(笑)。

しゅーちゃん:公演全体の時間の都合で、泣く泣く削った曲もすごくたくさんあったんですよ。

──セットリスト、すごく良かったです。FFXIVのストーリーに沿った2部構成というのは公式コンサートも同様でしたが、よりヒカセンのプレイヤー体験に寄り添っているのは、間違いなくヒカオケだったなと思います。

かしゅー:ありがとうございます……!


──『新生エオルゼア』からの楽曲の中でも、ストーリー序盤の曲が多めだったのが印象的でした。
初めてエオルゼアで冒険を始めたときの気持ちが蘇ってきて、思わず目頭が熱くなりました。

しゅーちゃん:団員にエントリーしてからエオルゼアに足を踏み入れる団員もたくさんいましたし、「光のお父さん」を観てFFXIVを始めた層に向けて、「できるだけ序盤の曲を入れよう!」と、三国と序盤のダンジョンの曲のメドレーになりました。

大臣:三国のうちどれか1つだけの選曲にすると、他の都市から開始したプレイヤーが不満ですから(笑)。「隠し財宝を求めて(序盤ダンジョンで流れるBGM)」なども、間違いなく公式コンサートじゃ演奏しないだろうなと、後になって思いましたね。

おみ:曲の前半/後半を分ける蛮神の履行技のサウンドエフェクトの演出を、オーケストラで再現できたのは、ヒカオケだからこそできたのかなと思いました。

かしゅー:公式コンサートと被らない選曲というのは、最初は少しだけ意識していました。ですが、そのあたりを気にせずに自分たちの気持ちでやったらうまいことできたかなと。

しゅーちゃん:零式やレイドで使用されている楽曲も、扱いをどうするか……というのはかなり揉めました。ですが、全体的にFFXIVのストーリーを中心とした構成にすることで、ギャザクラ民の皆さんにも寄り添えたセットリストになったのではないかなと思います。

──選曲会議は本当に大変そうですね。

おみ:メドレーにして、なるべく多く楽曲を詰め込みました。『紅蓮のリベレーター』からの楽曲は「紅蓮のプレリュード」と「壊神の拳が届く場所」を演奏したいって話が最初にあったのですが、 そこだけ演奏してもストーリーとして話が繋がらないと思いました。
曲名はまだわからないけど、とりあえずセットリストに組み込もうという流れを作りました。その後、当該楽曲のオーケストリオン譜が実装されてから、曲名を確認してスクウェア・エニックスに申請しましたね。

大臣:オーケストリオン譜が出るたびに曲名を拾っていったね(笑)。


──公式コンサートの時は既に『紅蓮のリベレーター』が発売した後でしたが、セットリストは『蒼天のイシュガルド』までの楽曲でしたから、少し物足りなさがあったんです。ヒカオケで見事にその気持ちが補完されましたからね(笑)。

かしゅー:我々も演奏できて嬉しかったです。

しゅーちゃん:「聴かせたい」よりも「やりたい!」の賜物だった気がします。
大臣がクガネ、「鬨の声」は私が、お見送りのツクヨミはおみさんがそれぞれ譜面を書いています! ちなみに、クガネの和太鼓を叩いていたのは私です。あのためだけに和太鼓を借りました。

 

コンサートを終えてなお、いまだ鳴り止まないアンコール。


──コンサートが終わって数か月が経ちましたが、振り返ってみていかがでしたか?

しゅーちゃん:私はいまだに「本当に終わった……んだっけ?」って感覚です(笑)。

かしゅー:他の題材のゲームと違って、オンライン上で毎日顔を会わせてるから、色あせないんですよね(笑)。

大臣:ヒカオケ運営チャットもいまだに雑談してたりで、なかなか勢いが落ちないです。なんだかんだでずっと地続きな感じが(笑)。

──今回のコンサートは、ヒカセン達が集まって本気を出せば「ここまで出来るんだぞ!」というリアルプレイヤーイベントの集大成だった気がしますよね。

大臣:そう言ってもらえると嬉しいです。でも、 自分たちでは「何かデカいことを成し遂げた」という実感は、実はそこまでなかったというか……(笑)。

おみ:自分たちが「楽しい」と思ってやったことが、お客さんにも楽しいと思ってもらえたなら、それが1番ですね。

かしゅー:リアルプレイヤーイベントとしては最大級の規模だったので、受け入れていただけるかドキドキでしたけど、やって良かったなと思いました。

しゅーちゃん:「デカいことやった……」というよりは、ゲーム音楽演奏界隈でやって来たことを、ヒカセンの皆さんがどう受けとるのかな? という気持ちはありましたね。

──結果、大盛況でしたね! 本当に楽しませていただきましたよ。

はまやん:あれだけスタンディングオベーションを貰えたのは、本当に嬉しかったなぁ。

大臣:スタンディングオベーションって、国内の文化じゃあまりしない印象しかなかったからなあ(笑)。

──「壊神の拳が届く場所」は観客も立って歌うものだと思っていたのですが、歌って良かったんですよね? 公式コンサートの頃からヒカセンみんなで歌いたいなと切望していたのですが……。

おみ:もちろん!

しゅーちゃん:歌ってくださったんですね! ありがとうございます!(演出考案者)


はまやん:もし客席から歌声が聴こえていなかったら、指揮者から「DPSが足らないよ!!」って言われてたかも(笑)。

──団員の方も何名か、楽器を置いて立ち上がり、歌っていたのが印象的でした。

はまやん:アラミゴ人の悲願だからね。

──団員である皆さんの持ち出しや自己負担を考えると、強く「2回目のコンサート開催を!」とは言えないのですが……。もし、次のコンサートを開くとしたら、どの曲を演奏してみたいですか?

しゅーちゃん:これ、実は運営でもチラッと話したんですけど、まず「新生編と蒼天編からはもう演奏しないのか!」というところをどうするか……みたいなレベルで戦争がはじまります。

おみ:基本的に戦争が起きる(笑)。

大臣:毎度、竜詩戦争が起きる。あと本当に次をやるなら、時期的に5.0の曲を入れるのか、とか(笑)。もしやるなら、ですけど!

しゅーちゃん:的を絞らせないんじゃないんです。そもそも私たちが絞れないんです。 絞れないからやるかどうかも決められない。でも、次の企画は本当に白紙です(笑)。

おみ:少なくともやりたくない、とは思ってないですよ(笑)。

 

最後に、ヒカオケからヒカセンへメッセージ!


おみ:同じヒカセンの皆さまと、楽しい時間を共有できたことを嬉しく思っています。エオルゼアでも一緒に遊んでもらえると嬉しいです!

しゅーちゃん:特にすごい人でもなんでもなく、私たちもみんなヒカセンなので。

大臣:コンサートでは演奏者だったかもしれませんが、ただのヒカセンなので(笑)。次は第1世界で会いましょう!

はまやん:気軽に声掛けてもらえると嬉しいですね。

──その行動力のおかげで、私たち聴衆も素敵な時間を過ごさせていただきました。本当にありがとうございました! これからのご活躍も……密かに楽しみにしています!(笑)

おみ:(苦笑)。

番外編:アンコールに事件屋が!? その真相とはいかに……。

かしゅー:そういえば、アンコールで指揮者としてヒルディブランドさんが来ていましたね。

おみ:来た来た(笑)。練習中もずっと「ここでゲストの指揮者がいらっしゃるので」って、指揮者の田中先生が説明していましたね。

しゅーちゃん:事件屋のヒルディブランドさんが来る事はなぜか、ヒカオケの運営が始まる前からアンコールに内定していました。

はまやん:それなら「事件屋のテーマ」は演奏しないと! という流れにはなっていました。

しゅーちゃん:ヒルディブランドさん、来てくれて本当に良かった。

かしゅー:何回練習しても笑ってしまって(笑)。 あの時に「エモート:事件屋のマンボ」が実装されていたら、多分踊ってくれてたと思います。

しゅーちゃん:本番おわったらヒルディブランドさん帰っちゃってたんですよね……事件屋の本業が忙しいんだろうな。

大臣:まさに“次回予告”で終わろう、って話にしていましたね。けど、ヒルディブランドさんが来るという演出は、直前まで自分も知らなかったんだけど!?(笑)

おみ:知らなかったんだっけ?(笑)

大臣:知らなかったよ!!(笑)